手術をする、と決めた後に、費用が莫大であることを知らされ、(日本円にして数百万円!)これは大変、と日本に帰って手術をする方向性に変えようとしました。けれど、早めに手術をしたほうが良いこと、帰ってから初診から始め、良い先生に手術してもらうように計らうのに、多大のエネルギーを使わなくてはならないことを考えると、やはりこちらでして帰ったほうが良いと考え、頭の中はぐるぐるでした。それで、正直に病院の医者のオフィスの人に言いました。「この額ではとうてい払えない・・」すると、「先生に話してみるわね。なんとかしてくれると思うわ」と言い、しばらくしてから折り返し電話があり、手術代を通常の半額以下にしてくれたことを知りました。
アメリカでは、このようなことが頻繁にあります。今回は、そうしてくれることを期待して言ったのではなかったのですが、お金のある人が高い医療費を払い、ない人はあまり払わなくても良いようにしてくれることがあります。むかし、知りあいのアフリカ人を、5番街の良い歯医者に連れて行ったら、ただ同然で治療してくれたことを思い出しました。そのかわり、トップモデルや成功した俳優、ビジネス界のお金持ちたちからかなりの額をもらっているようでした。お金はある人が払い、ない人は払わなくてもいい、という観念がこの国にはあります。わたしにとって足はとても大切なものですが、日本の数倍もする額を払うことは、現在のわたしには無理だったのです。それで、恩赦をいただきました。
これは、究極的な資本主義の精神の一部でもあると思いますが、キリスト教精神もあると思います。持てる人が寄付したり、社会貢献することが良しとされています。自然食品の製品を見ても、「誰々さんが、持っていた土地を寄付してそこで自然農法を始めたのがきっかけです」とか「誰々さんに寄付してもらった土地でみんなで協力して、ホルモン剤や成長剤を打たずに野原で自然に育てた牛で自然の牛乳を作り、そこから美味しいヨーグルトを作っています。このヨーグルトを食べて、みんなで社会貢献しよう」と書かれています。いぜん、スエットロッジ(ネイティブアメリカンの儀式のひとつ)に参加したことがある、と書きましたが、それも、お金持ちの女性が延々と続く山と広大な土地をあるネイティブアメリカンの女性に寄付し、そこで長年儀式が行われてきたのです。けれど、外からの悪影響を考慮して限られた人しか山に入ることは許されていませんでした。それでも、広大な土地を、なにか(この場合はネイティブアメリカンの伝統と精神性)を守るために寄付したこの女性は素晴らしいと思いますし、その精神を守り、山を守ってきた女性たちに敬意を払います。
多くの人が社会のあり方に関心を持ち、貢献すること、そしてそれが評価されるこの国の態度はわたしの好きなところです。もちろん、この国にも良くないところも、欠点もありますけれど・・・。この福祉精神と社会貢献の意識は見習っても良いところだと思います。日本ではお金儲けした人は自分のためだけにしか使わないことが多いと見受けられます。90年代のバブルとその後の不況はその利己中心的な精神が招いたものではないか。あの90年代に、だぶついたお金が、日本の経済成長に貢献してくれた日本の労働者たちや、経済成長にともないないがしろにされてきた文化や伝統そして家庭環境の修復に費やされたり、海外の貧しい国々のために使われていたならば、現在の日本はもっと違った明るい国となっていたのではないか・・とわたしは思うのですが。残念なことです。
ところで、この医者は腕利きで忙しい医者でしたが、わたしのために協力してくれました。彼女もエンジェルの一人ですが、またもう一人ほかのエンジェルがわたしのところに、本当に前触れもなく訪れました。そのことを書きたいと思います。
手術をするのをためらったのは、メスを体に入れることが怖かっただけではなく、西洋医学の薬とわたしの体質が合ないため、麻酔やその他の薬にわたしの体がどう反応するか、が怖かったのです。けれど、今の状況では西洋医学に頼るしかなく、手術と入院を決めました。しかし、やはり、大変でした。術後1時間ほどして全身に湿疹があらわれ、吐き気がし、気持ち悪くなりました。それで、痛み止めを打たないまま過ごしていたら、今度は手術(足を切り開いて筋を縫い合わせる)の痛みが激しく襲ってきました。仕方なく、モルヒネ系でない、他の痛み止めの薬を飲みましたが、今度は意識がもうろうとしてしまい、食べることも喋ることもできなくなりました。
自分の体質を一生懸命医者に説明するのですが、なかなか分ってもらえません。西洋医学というのは統計と、理論でやるものであり、臨床と経験や勘はないがしろにされがちです。わたしのように「一般的または統計的ではない」敏感な体質のことはあまり分らないのです。これは、どこの国でも西洋医学を信じる人は同じような反応です。(東洋医学や他の医学は別ですが・・・。)それで頭はもうろうとしているし、全身だるいし、もうどうしたらよいか分らないで困っていました。ところが・・突然、手術2日目に、ある女性が看護婦とともに現れました。見た目には、エリートの医者か、看護婦長のような白人女性でした。扱いにくい患者に困っている、という看護婦と一緒に現れた彼女は、眉間に少ししわがよっており、「あ、また違う妙な人が現れたぞ」とわたしは内心困っていました。
ところが・・・この人がエンジェルだったのです。





















































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