2週間くらい前だったか、渋谷文化村のオーチャードホールで、中国の舞踊家ヤン・リーピンの作品『シャングリラ』を見に行った。すぐに感想を書かなかったのは・・面白くなかったからだ。劇場に入って、舞台の上を見た途端にわかった。「あ、はずれた・・」舞台装置が、正直のことをいうと、ため息がでるほど・・なんと言ったらいいのか、完成度が低かった。そして、その嫌な予感は当たった。わたしは1万円払ったチケットだったし、もしかして良い場面もあるかも知れない、最後までみてみよう、と思って座ってはいた。列の真ん中だったから立てないのもあった。それに、わたしは「良くない」と感じるものに対して非常に気が短いので、そんな自分を戒める気持ちもあった。けれど途中で爆睡してしまった・・(苦笑)。
中国の南西部の少数民族の舞踊をひとつにまとめたものだった。20くらいの少数民族の歌や踊りや太鼓を1つのステージにしていた。衣装に凝っているというのも前評判で聞いていた。こう書くと素晴らしいものに聞こえる。わたしも楽しみにしていた。けれど、これまであまりに多くのステージを観てきているせいか、残念ながら感動できなかった。あ〜、わたしが振り付けをしてやりたい・・などと不遜なことを考えながら観ていた(笑)。
良くなかったことをあげつらっても仕方ないので、これ以上は書かないが、思ったことは、民俗舞踊や音楽を現代舞台にすることの難しさである。民族舞踊というのは、元々、民衆が、農耕や刈りなど生活の営み、季節の移り変わり、男女の逢瀬、そして宗教心のもとに、人に見せるためではなく、自分たちのために踊ってきたものである。または、神のために。それを、人に見せるための舞台にするとなると、一度視点を変え、なにを守り、なにを捨てるかをきちんと考えなくてはならない。そして、なにを表現したいのか、なにを伝えたいのか、が大切になって来る。
残念ながらこの舞台は、こんな民族もいますよ、という展示会のようになってしまっていて、芸術性がおいてけぼりになっていた。そして、精神性もかなり抜け落ちていた。しかし、これは本当に難しい作業であるので、簡単には批判できない。観客には、少なくとも、中国という国は漢民族という民族の単一国家ではなく、漢民族が多くの(確か60以上だったと思う)少数民族を強制的に支配下においているのが、中国という国だ、ということは伝わったかも知れない。そして、ヤン・リーピンは消え行こうとしている少数民族たちの文化の価値をみとめ、人にその存在を知らしめようとしている点では尊敬に値すると思う。
今、チベットの独立のことが問題になっているが、チベットも中国という国に武力で無理矢理傘下におかれた国である。今もって、インドで亡命生活を余儀なくされているわたしのこころの友(笑、)チベット密教の最高指導者であるダライ・ラマは、中国の侵略によって故国を追われ、50年たった今も国に帰ることが許されないでいる。今回の暴動は、チベット民族にとってとても重要である信仰を捨てるように中国側が強制していることに端を発している。
この舞台でもチベット舞踊と音楽が演奏されたが、あまりの酷さにわたしは、チベット舞踊が始まった途端に爆睡してしまったけど・・・(学生のころからチベット音楽は聞いていたので、つい、良くないと苦しくなって眠ってしまう・・苦笑)
芸術というのは、作っている当人に意識があるかないかは別としても、メッセージを伝える力があるので責任のあるものなのだな、とつくづくと思った。そして、アフリカンダンスと音楽の素晴らしさに改めて気付かされた。
アフリカンダンスも民族舞踊であるが、アフリカで今でも人々の生活のなかに密接にあるせいか、その音楽と踊りの質の高さは他の民族舞踊や音楽より群を抜いて、素晴らしい。今回の舞台には70人ほどの人が一斉に太鼓を叩くシーンがあったが、ギニア人が6人で演奏する音楽のほうが断然聞きごたえがある。また、アフリカの舞踊と音楽は舞台芸術化に成功している、数少ない民族舞踊/音楽のひとつだろうと思う。それだけではない。アフリカ、特に西アフリカの音楽と踊りは20世紀以降のダンスと音楽に世界的な影響を与えている。ジャズ、ヒップホップ、ロック、R&B、サルサ、ブラジリアン・・挙げたらきりがないほど、世界中の音楽/舞踊の基本となっているのが、西アフリカの音楽/舞踊である。奴隷制度は人類の負の遺産であるが、そこから生まれたのが、多くの素晴らしい音楽と舞踊だったと考えると、ますます、アフリカ人の強靭な生命力と、音楽性に頭の下がる思いがする。
Viva, West African music and dance!!
西アフリカのダンスと音楽、永遠なれ!
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ご存知の方も多いかも知れないが、現代音楽の多くは、アフリカからアメリカ南北大陸とヨーロッパに連れて行かれた、アフリカ人奴隷によってその基礎が作られた。キューバやブラジルのオリーシャダンス、サンバもそうである。また、エルビスプレスリーによって、世界的に知られるようになったロックミュージックも、彼がアメリカ合衆国南部で黒人たちがやっていた音楽を真似して生まれたものである。もちろん、ジャズもブルースもアフリカ人奴隷が作ったものであり、ラップはアフリカの伝統的な音楽の手法であり、ヒップホップもR&Bもすべて奴隷の子孫であるアメリカの黒人たちが、アフリカの音楽とダンスを元に作り出したものである。20世紀以降世界を魅了した音楽とダンスのほとんどのルーツはアフリカにある。
わたしも数ある音楽の中で一番西アフリカのリズムが好きです。飽きません。学べば学ぶ程虜になります。
尊敬してます。
Posted by: oto | 2008.03.31 at 22:06